4年生時代 その㉖ “お兄ちゃん”の子リス

産声が違ったように、新生児時代の様子もまた、ちびリスは子リスとだいぶ違うのでした。

夜中におっぱいで目覚めたら、ちょっと飲ませて泣き止んだ後におむつを替えます。手を洗いに行って、戻って来て、さあこれからもう一度おっぱいを飲ませながら寝かせ…あれ?なんとちびリスは、すやすやと眠っているではありませんか!

私は驚き、「寝てる!大丈夫か?」と心配してしまうのでした。なぜならば、そんなこと、子リスの時には一度だってなかったからです!おむつを替えたら、おっぱいを飲ませながら最低30分、時には2時間近く、立ってあやさないと寝ない子だったのです。別人なのだから当たり前なのかもしれませんが、赤ちゃんとはそういうもの、という思い込みがありました。

新生児時代の子リスのことは、忘れようにも忘れられない、強烈な日々でした。
(詳しくは、「子リスのこと」:新生児時代 をご覧ください)
とにかく、寝ない、泣く、寝ない、泣く…それが永遠に続くかと思われた毎日でした。

それに比べてちびリスの穏やかさは、特に高齢出産だった私には本当に有難いことでした。(一概に言えることではないかもしれませんが、40歳過ぎての妊娠、出産は、体力的には本当にタイヘンです…)もし、子リスとちびリスの生まれる順番が逆だったら、私は一体どうなっていたか…と、今でもよく夫と話します。

二番目以降の赤ちゃんの場合、経験がある親の余裕を、赤ちゃんが感じ取って落ち着いているとはよく聞く話です。そう考えると、本当にタイヘンな思いをしたのは、初めて親になった私達のところに生まれた子リスの方である、ということになりますが…いやいや、そればかりではなく、子リスは生来、並々ならぬエネルギーにあふれた子供だったのだ、ということにしておきましょう。

さて、ちびリスを加えた家族4人の新しい生活は、大きく変わったというよりは、小さいかわいい物がぽちょんと増えたという感じで、何となく家族全体の雰囲気が柔らかくなったように感じました。(状況としては、夫の転職やら何やらで、そんなに平穏でもなかったのですが…。)

学校から帰って来ると、子リスはまず寝ているちびリスの顔をのぞきに行きます。そして、学校での出来事などを、一生懸命やさしく話しかけているのでした。

「今日、お兄ちゃんはテストがあったんだよ。」(もう一人称は「おにいちゃん」)
「明日は短縮授業だから、早く帰って来られるからね。嬉しいでしょ」

など。本当に微笑ましく、そのまま額にいれて飾っておきたいような光景でした。

ある日の夕食後、寝ているちびリスがもぞもぞ動いているのを見て、ふと夫が気付いて言いました。「この布団、ちょっと重いんじゃないの?」
そうだねえ、軽い毛布があったらいいよね。ということで、私はベビー用品の専門店に出かけることにしました。子リスも行く?と誘ってみると、一緒に行くと言います。
おっぱいを飲んで寝たばかりだったちびリスを夫に託して、私と子リスは車に乗って出かけました。もう8時も近く、外は真っ暗でした。

〇松屋の駐車場に車を止め、お店に入って、赤ちゃん用の軽い毛布を見つけました。ついでに、おしりふきコットンと綿棒も買っていこう。子リス、ちょっとママあっちの棚を見て来るね。と言い、隣の通路に行って細々としたものを見ていると、子リスが後からやって来ました。全力で走りながら、通路に響き渡る大きな声で歌を歌っています。

2~3才の小さい頃ならともかく、小学校に入ってから、外でそんなに大きな声で歌ったこと、あったっけ?お店の中で走り回るなんて、もう何年もなかったのに。
もうあまり人のいない時間でしたが、「お店の中で走らないの!」と私。子リスはすぐに立ち止まって声を落としましたが、まだ歌は歌っています。何となく、体全体に力がみなぎって、目もキラキラ、輝いている感じです。

それを見て、私はハッとしました。ちびリスは大人しい赤ちゃんだけれど、新生児は新生児。やっぱりそれなりに大変で、子リスにしてみれば、家の中の様子、時間の流れ、そして家族の関心の向き方も、随分変わったことだったでしょう。お兄ちゃんの子リスは、ちびリスの誕生を心から喜んでいましたが、急にお兄ちゃんになったことでの戸惑いもあったに違いありません。
子リスなりに気を遣っていたであろう、「新生児のいる部屋」から出て、ちょっと解放された気分もあったのかもしれません。

そしてもう一つ。そう言えば、ちびリスが生れてから、子リスと2人で買い物に出たのはこれが初めてでした。
こうして私と2人になったことで、嬉しい気持ちになってくれたのかな。やっぱりコドモなんだなあ…。ついこの間まで、一人っ子だったのだし。

子リスの健気さと無邪気さに、ちょっと胸が痛くなって、少し遠くまで二人でドライブをしたいような気持ちになりましたが、そうも行かず、
でも今日のことは絶対に忘れない、と心に誓ったのでした。
それは勿論、子リスのためですが、私にとっては子リスの「ママと2人を喜んでくれた気持ち」がただ嬉しくて、宝物となって私の心にしまわれたのも事実です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA