子リスが学校で声を出す日、というのが、どんなふうに訪れるのか。
それを想像するのは難しいことでした。「今日、学校で声を出して喋ったよ!」と子リスが報告してくれる?いや、それは子リスの性格からして考えにくいので、「子リス君が今日、声を出してくれましたよ!」と先生から連絡があるのかな…何にしても、それは一体いつのことになるのだろう?そもそも、その日は、本当に来るのだろうか…。
そんな空想や不安が、時々頭をかすめはしましたが、何しろ幼稚園時代からかれこれ4年間の、いわば「膠着状態」を、一体どうやって抜け出すのかとなると、これは本当に予想のつかないこと、予想することすら怖いことでもありました。
でも「その時」は、突然訪れたりはせず、「いつの間にか」始まっていたのです。
子リスが学校から帰ってきた時に、「今日は喋れたの?」などとチェックしたりしない、
というのは、1年生の時からの一貫した方針でした。だから、
「学校どうだった?」と聞いて、子リスが、
「楽しかった」「うん、普通だった」(←小学生男子のいつもの返答)
と答えたら、あとは、学校からの手紙や連絡帳、返されたテストなどを見ながら、「もうすぐ校外学習なんだね」「へー、テストがあったんだね。」などと普通の話をするだけで、今日1日の中で、子リスは喋れないことで何か苦労したのかどうか、というのは、実は殆ど知らずに過ごしていたのです。
今思うと、随分と無責任な母親だったみたいだなあ、という気もしてきます。
それが、4年生の3学期のある日、ふと、
「そう言えば、健康観察(出欠確認)は、手を挙げて(伝えて)いるの?」
と聞いたことがありました。すると子リスは、
「口で言ってる…かな。」
と言うのです。私は耳を疑い、思わず大きな声で、
「え?口で?声出して?」
と、聞き直してしまいました。子リスはかなり照れ臭そうに、もごもごと
「うん。ちょっとね。」と言います。
それでもまだ信じられない私は、
「え?『ハイ元気です』って??ホントに??」
と確認すると、
「言ってる。」
「い、いつから?」
「忘れた。少し前から。」
と言うではありませんか。
……え?ママ聞いてないんだけど。声、出してたの!?!?