3年生時代 その⑨ ポケモンスタンプラリー

 夏休みが始まりました。 小学校に入って3度目の夏休み、子リスにとってのちょっとした“冒険”が、いくつかありました。
 
 その1つが、JRが毎年開催している「ポケモンスタンプラリー」でした。 同じマンションに住んでいるT君親子とは、毎週水曜日、どちらかの家へ行って遊ぶのが1年生の頃からの習慣になっていました。初めは、何をして遊ぶにも子リスは私のそばから離れず、もちろん声は全く出さず、ボードゲームのルーレットを回すにも私の手を持って、私に回させて…という状態でした。でも3年生になった今では、私達親も同じ部屋の中にはいるものの、子供達(T君と弟のH君、それに子リスの3人)は子供達だけの空間で、ボードゲームやかるたなどの遊びに没頭するようになっていました。 そして子供達が遊んでいる間は、私はT君のお母さん(Nさん)といろいろなおしゃべりをして過ごし、水曜日の午後は私にとっても楽しみな時間になっていました。

 夏休み、どこか行くの?今年もおじいちゃんおばあちゃんの所に行くくらいかなあ。夏祭りも来るね…と話しているうちに、Nさんが、子リス君も“ポケモン好き”だから、スタンプラリー、よかったら一緒に行こうよ、と誘ってくれました。こちらの会話は全部聞いている筈の子リスをちらっと見ると、目が輝いています。 「子リス、行きたい?」と聞くと、ちょっと照れたような笑顔で、大きく頷きました。

 そんな訳で、7月下旬のある日、Nさん親子3人と私達2人の合計5人で、ポケモンスタンプラリーの旅に出かけました。 私はイベントなどの情報に疎い上に面倒くさがり、友達と出かける時のあれこれを決めるなんて、不得意中の不得意ですが、Nさんは私とはまるっきり正反対。行く場所から時間まで、本当に細やかな気遣いで計画を立ててくれる人なのです。そんな訳でこの日のコースは、全てNさん任せになりました。 マンションのロビーで待ち合わせて出発。子供達はニコニコしていますが、すぐに交わる訳でもなく、取敢えず自分の母にくっついています。
  池袋からJR山手線に乗り継いで、いよいよスタンプラリーの始まりです。池袋から代々木までにスタンプ6個を「ゲット」。ハンバーガーショップでお昼を食べて(ここでも子供達が頼んだのはポケモンのおもちゃが付いてくるセット。)、そこから汐留まで足を伸ばして日本テレビで遊ぶ時間をとりました。Nさんが考えてくれたこのメニューに、子供達はもちろん大満足です。 (余談ですが、今では何とも思わなくなった「ゲットする」という言葉、当時はまだ私には新しく感じられたものです。ポケモン、ゲットだぜ!から来た言葉なのでしょうか?)



  子供達は、駅ごとに違うポケモンのスタンプを見つけるたびに大喜び。 「パルキアだった!」「スタンプちょっとずれちゃった」「次はディアルガ!」「今度はきれいに押せた!」「あと3つで終わりだね」 などと言い合って本当に楽しそうです。 T君とH君兄弟は、もちろん普通に話しています。そして子リスも、二人の会話を聞いてニコニコしたり、時々「ボクのはちょっと薄かった」と、私に向かってなのかT君達に向かってなのかわからないぐらいの方向に向けて、いつしか話し出していました。
 そして、その日の目標のスタンプが全部押せて、ゴールの駅で景品をもらい、帰りの電車に乗った後、誰から言い出したのか、子供達は「ポケモンしりとり」を始めていました。 T君もH君も、毎月ポケモンの雑誌を購読しているだけあって、よく知っています。 でも子リスも負けていません。実は3人とも結構マニアックな性格のため、ポケモンしりとりはかなりハイレベルな戦いとなりました。 そして、この時に聞いた子リスの声は、それまでに子リスが友達と話しているのを聞いた中で最も、はっきりとした大きな声でした。

 相当、楽しかったんだなあ…。

 私は本当に嬉しくて、T君とH君、そしてNさんに心から感謝しました。 マンションまでの帰り道で、Nさんにこっそりお礼を伝えました。 ポケモンしりとりは、マンションのエレベーター前でNさん親子と別れる直前まで続いていました。

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