応援部に入ったことで、子リスの高校生活は思いもよらない方向に展開しはじめました。
学ランを用意したり、ヨーロピアンシューズと呼ばれる、先のとがった革靴を買ったり、応援部の独特の言葉遣いや先輩に対する礼儀、部内でのルールを覚えたり…と、新鮮なこと尽くしでした。
でも、そういうワクワクする要素が沢山ある一方で、練習の大変さはやはり並大抵のものではなく、次第に体力・気力ともに限界に近づいている様子が見えてきました。そして、部活が気持ちの負担となって、寝ても覚めてもその事で頭が一杯、といった状態は夏休みに入る直前にピークを迎え、気が付けば子リスの顔からは笑顔が消えていました。
まさに“試練の時”です。中学校の“居心地の悪かった部活”とは、全く違った種類の試練です。
夏休みが始まって間もないある日、久しぶりに家族4人で車で出掛けました。
後ろの座席に座った子リスが言います。
「今度、また1人部活辞めるんだ」
「そうなんだ…」
「こんな状態で、やっていけるのかな」
「どうしたいの?」
「…」
「子リスも辞めたいって思ってるの?」
「やめたって…行くところもないんだよ。ここで投げ出したって、他のところに行って頑張ろう、と思えるわけじゃない」
やめても行くところがない?
本当はそんなことはない筈です。余程の事情がない限り、部活動が(実質)強制参加だった中学校とは違い、いわゆる「帰宅部」だって許されています。
「やめても行くところがない」と言った子リスの言葉の中には、本当はここで頑張りたいのに…という気持ちがあるのだろうと思いました。応援部は子リスにとって、たとえ「魔が差して」入ったにせよ、大きく変わるチャンスであったはず。そんな特別なチャンスを、ここで捨てしまうことは出来なかったのではないかと思います。気持ちを他に向ける気になんてなれない、ということだったのでしょう。
他に行く気にはなれない。でも心身ともに大分打たれた感じで・・・そんな状態のまま、7月末、子リスは初めての夏合宿に出かけて行きました。
ダイジョウブかなあ…