3年生時代 その⑥ 友達と遊ぶ (家の外で)

 明るく楽しいRay君と、もう一人、Ray君の仲良しのRick君、二人とも家が近かったので、学校からの帰り道はいつも3人一緒でしたが、ベランダから見ていると、二人が何かを子リスに言い、子リスがニヤニヤ笑っている、という姿がよく見られました。

 2人は時々、子リスを公園に誘ってくれることがありました。
 3人で近くの公園に出掛けるのを初めて見送った時は、嬉しくもありましたが、同時にものすごく不安だったことを覚えています。「どうやって遊んでいるのかな」「一人ぼっちになってないかな」「Ray君とRick君は、子リスと遊んでつまらなくないのかな」と、親心だか老婆心だか全開で、帰って来るまで心配し続けました。もしかしたらやっぱり遊べなくて、あっという間に帰って来るかとドキドキしながら。
でも幸い、泣きながら帰って来るようなことはなく、「どうだった?」と聞くと、「楽しかった」という答え。「何をして遊んだの?」「イロイロ…。」
 イロイロねえ…何がどんな風に楽しかったのか聞きたいような気もするけれど、どうやらムネがいっぱいのようなので、「よかったね。」とだけ言っておくことにするか…。そんなことが何度かありました。

 市役所から流れる「夕焼けチャイム」(お家に帰りましょうという放送)が鳴る頃、私がマンションの外で待っていたところへ、Ray君のお母さんとRick君のお母さんも迎えに来ました。そして間もなく、3人の姿が見えました。母3人でしばらく立ち話をしている間、子供達はその周りで、そばの草をむしって遊んだり、鬼ごっこをしたりしていましたが、その中にいる子リスは、声は出さないものの終始笑顔でした。うっかり「ひゃあ」という声がでたりすると、
 「あ、子リス今『ひゃあ』って言った!」と二人で大騒ぎ。子リスは「しまった!」と言わんばかりに手で口を押さえますが、その後はきまり悪そうな、でも嬉しそうな照れ笑いを浮かべて、また走りだしていました。

 そんな日は家に帰ってからも子リスはとても元気でいきいきしていました。
「どんなことをして遊んだの?」
「いろいろ。」
 その頃には私も、子リスが喋らずにどうやってコミュニケーションをとっていたのか、ということを聞きたいとはあまり思わなくなっていました。あまり聞かれたくもなさそうだし、こちらとしても、「ま、いいか」という気分でもあるし…子リスが嬉しそうなので十分ということにしていました。
子供にとって、楽しいということが全てなんだな、ということが少しずつ分かってきた頃だと思います。

 今思えばあの頃子リスの中ではきっと、回数こそ少なくても、友達と遊んだという経験が、人とつながる基礎を作る大きな助けになっていたのだろうと思います。
喋れない子リスを助けようとする、とかそんなことでなく、ただ子リスと遊びたくて遊んでくれていた友達に、心から感謝しています。

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