朝。子供達が登校して教室に入り、しばらくすると担任の先生が入って来て始業となるわけですが、その瞬間から子リスににはチャレンジが始まります。なぜなら、先生が出席をとるからです!
子リスの小学校では、この出欠確認のことを「健康観察」と呼んでいました。多くのクラスでは、先生が一人ずつ名前を呼び、呼ばれた生徒は、「ハイ、元気です」と答えます。でも、休む程ではないけれど元気とは言えない、というような日もあるわけで、そんな時は、「ハイ、ちょっと風邪気味です」とか「ハイ、お腹の調子がよくないです」などと答えるという、ちょっとユニークな出席の取り方なのでした。
これを子リスはどうやって過ごして来たのでしょうか。今更ながら、本人に尋ねてみます。何しろ、「今日は健康観察、どうだった?」などと本人に聞くことはゼッタイしないという方針でやっていたので、本人の口から聞いたことはなかったのですが、どういう訳かこの問題については、先生に尋ねたこともありませんでした。
さて、子リスによると・・・
1年生の時は、いわゆる「口パク」で過ごしたそうです。「はい、げんきです」という子リスの口の形を先生が読んで下さるという方法です。2、3年生時は、手を挙げるだけで、先生が「ハイ、わかりました」と言って下さっていたとか。
なるほど。
ところが4年生になると、O先生のやり方はちょっと違っていました。
一番初めの人の名前を先生が呼びます。呼ばれた子は、「ハイ、元気です」等と答えた後、出席簿で自分の次になっている人の名前を「○○君・さん」と呼ぶ・・・というシステムでした。これを子リスはどうしていたのかというと、
初めのうちは、前年までと同様に「口パク」で“ハイ。げんきです”と答え、子リスの次の人の名前を先生が呼んで、システム再開、となっていたようです。でも2学期頃からは、O先生はちょっと負荷をかけ始めて下さったそうで…
子リスの名前が呼ばれたら、先生のところまで立って行って、先生の耳元で、「ハイ、元気です」と言う(囁く)ことになった、ということでした。
先生のところまで行って何かを伝えなければならない場面は、これまでも何度もあったはずです。算数の問題に答える時、黒板まで歩いて行って答えを書く、という様なことも、これまでやって来たことでした。
でも、4年生のこの頃から、子リスはあることに気付き始めた、と言うのです。
それは、「自分の所で、流れが止まるんだな」ということ。
トントンと、リズムよくスムーズに続いていた健康観察の流れが、子リスの番になった所で急にせき止められ、子リスが先生のところに歩いて行くまでの間、教室は静かになります。そして、先生の耳元で子リスが“元気です”を言っている間、子供達はその様子を固唾を飲んで見守っている訳で…
子リスがそのことを初めてて意識したということは、クラス全体と、その中にいる自分の状態を、初めて客観的に見たことになるのだと思います。
その、「客観的に自分を見始めた」ということが、子リスにどう働いたのかと想像してみると、まずはとてつもなく大きなプレッシャーとなってのしかかって来たのではないかという気がします。でもそれは悪いことだったわけではなくて、あの時の子リスにとっては必要なことだったのだろうと、思っています。
今そう思えるのには、二つの大事なキーワードがあって、
それは「タイミング」とO先生の「やり方」でした。