5年生時代 その⑲ 3月11日

お昼過ぎ、私はリビングの床で、お座りしているちびリスに絵本を読み聞かせていました。

すぐそばには電子ピアノが置いてあって、その楽譜立ての横には、夫と子リスが一緒に作った、“ポケモンの世界”のジオラマが飾ってありました。

突然、下からドーンと大きな力が突き上げて、ケース入りのジオラマがガシャガシャーンと、ちびリスのそばに崩れ落ちて来ました。

地震だ…とわかったのと同時に、私はちびリスを拾い上げ、隣室のベッドの上へ走り、布団を頭からかぶりました。
揺れは全く収まらず、今までに経験したことのない強さで続きます。私は必死で、助けて!守って!と、天国の父に叫びました。私の大声と、急に暗い布団の下に連れて来られたので、ちびリスは怯えて泣き叫んでいます。

やがて、ようやく揺れが収まっても、ちびリスは泣き続けていました。

 

子リスは、学校でどうなっているだろう?夫は…?殆どの日が在宅での仕事なのに、今日に限って神奈川の本社に行っています。

恐る恐るドアから出てみると、同じ様なタイミングで、マンションの同じ階の人達が通路に出てきました。T君のお母さん、Nさんも出てきました。

震度5だって。震源地、どこなんだろうね。
また来るかもしれないね。子供たちがもうすぐ帰るよね。
そうだ、今日は、来年度からの新しい登校班で、集団下校をする日だった。

部屋の中にいたら良いのか、外が良いのかわからないまま、でも何だかそれぞれの部屋に戻るのは心細くて、数人でマンションの駐車場で子供達の帰りを待っていると、
2つの班の子供達が、一列に並んで帰って来ました。子リスは1つの班の班長なので、先頭にいます。
ちびリスを抱っこして待っていた私の顔を見ると、小さく頷きました。

「学校では、すぐに机の下に入ったし、危ないことはなかったけど、帰ってきてお母さんの顔見たらほっとした。」
と子リスは言いました。

振動が下からいきなり突き上げたように感じたので、まだこの時は、きっとこれは首都圏直下型の地震だろうと思っていました。だから、神奈川に行っている夫、東京に住む私の母、夫の母と弟、それから私の兄夫婦のことだけを心配していました。

その後、子リスと一緒に部屋に戻り、情報を得ようとテレビをつけた時、信じられない光景を見たのです。
それは私の故郷が、波に飲まれて街ごと押し流され、潰され、それから沖の方へと引きずられて行く様子でした。

2011年3月11日、東日本大震災の日。本当に大変なことが起こったのだと理解するのに、随分長く時間がかかったように思います。今も理解できているのかどうかわかりません。故郷の人達が、懸命に復興の努力を続けてきたこの時間さえ、受け止められずにいるような気もします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA